INTERVIEW 04
技術研究所
基礎構造課
T.F
01
地盤変状のミリ単位予測から杭の耐震実験まで。
建物を「地面の下」から支える
私が所属する基礎構造課は、杭や基礎など、建物の地中部分の安全を守る部署です。業務は、実験室での研究から実際のプロジェクトの技術支援まで多岐にわたります。実験室では、杭がどれだけ建物を支持することができ、地震でどう壊れるかを調べます。プロジェクトでは、超高層ビルの基礎設計を支援し、工事中の掘削や建物構築時の地盤への影響など、工事計画が地盤工学の観点から安全かを見極めます。
これまでの業務で印象に残っているのが、本社ビル建て替えプロジェクトの技術支援です。地下を約25メートル、階数にして3階分を掘削する工事でした。深く掘るほど、周辺地盤への影響が大きくなります。そばには地下鉄が隣接するため、周辺地盤の変位量を数ミリ以内に抑える必要がありました。着工前には、周辺地盤がどれだけ変状するかを解析で予測。工事開始後は、得られた測定値を予測と照らし合わせながら、建物が竣工するまでの約3年間、変状を追い続けました。予測と異なる兆候が見られた際には、原因を調べて最適な工法を検討・選定し、変化量が許容範囲におさまる根拠を示して関係者に説明することもありました。
解析と現場で培った経験をもとに、目に見えない地中の動きを先読みして工事を前に進めることが、この仕事の醍醐味です。
一方、実験室では、「大口径杭」に力を入れてきました。杭とは建物を安定して支える地中の柱で、実験は通常直径400ミリほどの縮小模型で行います。ただ、実際の杭は直径2.5メートルに及ぶものもあり、縮小模型だけでは実物大でも同じ性質を示すか十分に確かめられません。過去の研究プロジェクトでは、より実物に近い直径800〜1200ミリの試験体を用いた実験を計画し、国内でもほとんど例のないデータを得ることができました。
杭は、地盤と建物の接点にあります。足元の地盤を読み解く力とその上に載る建物の構造を理解する力、どちらが欠けても全体は捉えられません。戸田建設で現場と研究の双方に関わってきたからこそ、その両方の視点から課題に向き合う力が身についたと思います。
02
学生時代に定めた研究者としての軸。
地盤工学の専門性を深め、自分の強みに
私が地盤分野を選んだのは学生時代です。建築の構造系では、鉄筋コンクリート造や鉄骨造を専攻する学生が大半でした。その中で私は、建物の安全を足元から支える地盤工学に自分の専門性を定め、深めていこうと決めました。
戸田建設を選んだのは、大学で取り組んだ杭の研究を実際の建物づくりに直接生かせると感じたからです。目指していたのは、一つの技術だけを極める研究者ではなく、地盤工学に関わる幅広い業務を担える技術者でした。戸田建設の規模だからこそ、杭の支持力を調べる実験から、耐震研究、掘削工事の安全確認まで携われると考えました。
学生時代共同研究で接した戸田建設の先輩研究者からは、学生だった私にも、研究の進め方から学会発表まで丁寧に教えてくれました。技術者を育てる会社なのだと感じたことも、入社を後押しする要因のひとつとなりました。実際、入社2、3年目には実験の担当を任され、自ら考えながら仕事を進める経験を積めました。
大学で学んだ専門知識は、今では自分の強みになっています。地盤にはばらつきがあり、わずか10メートル離れただけでも性質が異なる場合があります。そのような条件下でどのように基礎を構築するか、工事をこのまま進めてよいか、教科書だけの知識では答えを導き出せません。現場と実験で培った経験から答えを導き、プロジェクトを前に進められることに、この仕事のやりがいを感じています。
03
課題がある限り、
耐震の研究に終わりはない
国内では、杭の耐震性能の研究が約70年にわたって続けられてきましたが、今なおわかっていないことが残されています。この20年は大地震にいかに耐えるかが大きなテーマです。私も入社以来、耐震性能を確認するための構造実験を学会活動と連動して続け、結果を設計手法に反映してきました。大きな地震が起きれば、現地で杭の被害も調べます。
それでも、ここまでやれば大丈夫だという想定を地震はたびたび超えてきました。たとえば、2016年の熊本地震では震度7の揺れが連続して発生し、2026年にも熊本を震度7の地震が襲いました。2024年の能登半島地震では、杭基礎の損傷が主因と考えられる建物の転倒事例も発生しました。災害のたびに、新たな課題が生まれます。また、民間企業である以上、安全性とコストを踏まえた解決法を常に模索する必要があります。その答えを探すところから、次の研究が始まります。
わからないことが残っている以上、研究の幅も広がり続けます。戸田建設には、基礎構造の研究から派生した幅広い研究分野にも、手を挙げれば挑戦できる環境があります。研究者が現場に足を運び、自分の予測を実測で確かめられます。机上で終わらないこの環境が、技術者のノウハウを育てます。その背景には、お客様やパートナーの求めに真摯に応えようとする社風があります。
今後20年、30年をかけて、未解明の領域に一つずつ向き合いながら、実際の被害を反映したより良い設計法を確立したいと考えています。地震に負けない基礎構造の追求が、研究者としての私の目標です。
