
美しい東京湾を目指して
全国でも珍しい完全地下式の下水処理場「等々力水処理センター」。東京湾の水質改善を目的とした脱窒ろ過池の建設を当社が手掛けており、徹底した品質管理のもと工事を進めています。完成後は地上部が新たな憩いの場としても活用される予定で、地域に新たな価値を生み出します。

完全地下式水処理施設の挑戦
様々なスポーツ施設を備え、休日には多くの人々で賑わう川崎市の都市公園、等々力緑地。この公園内に、全国でも珍しい完全地下式の下水処理場「等々力水処理センター」があります。
ここは、中原区など周辺の5区、広さにして約5,490haから集まる1日約31万m3の下水を処理して、多摩川などに放流する施設です。1982年に運転を開始したこの施設は、2003年度に一部の高度処理施設を増設して、当初より浄化能力を高めています。そして現在、従来の高度処理工程ではできなかった「窒素とリンの除去」を実現する施設の整備を進めており、そのひとつである「脱窒(だっちつ)ろ過池」(以下、ろ過池)の建設を当社が手掛けています。
窒素やリンが多摩川を経て東京湾に流れ出ると、それらを栄養分とするプランクトンが大量発生して赤潮を引き起こします。また、大量発生したプランクトンの死骸が海底にヘドロとして堆積すると、メタンや硫化水素が発生することも懸念されます。
当社が手掛けているろ過池は、下水処理の最終工程に設置されるもので、微生物の働きと濾過によって、水中の窒素と汚れを取り除く役割を果たします。

巨大なコンクリート躯体を構築する
ろ過池は長手126m、短手60m、深さ21mという大きさで、イメージとしては「細かく間仕切られたプール」のような形状です。当社の仕事は、この巨大なコンクリート躯体を構築することで、設備会社が担当する後工事で、この間仕切り部分に濾過設備が設置される予定です。

この躯体の規模について、現場を指揮する作業所長は次のように話します。「壁厚が最大2m、鉄筋とコンクリートの総使用量がそれぞれ約9,000tと約61,000m3です。私はこれまでに様々な土木構造物のコンクリート躯体を手掛けてきましたが、その中でも最大規模です」。(以下、「」内は作業所長)
工事は地下最深部の底板から地上に向かって順番に躯体を構築していくという流れで、取材に伺った2025年4月にはほぼ最上部までコンクリートが打設されていました。このろ過池の完成後、地上部には階段室だけが残り、それ以外の空間はスポーツを楽しむことができる、等々力緑地の新たな憩いの場になる予定です。

左右は当社社員


丁寧かつ確実な仕事を積み重ねる
「今回の工事は、基本的には鉄筋を組み、50cm程度の高さを1層としてコンクリートを打設する、ということを繰り返すもので、難易度はそれほど高くありません。ただ、土木の躯体は型枠を外した状態が即仕上げとなりますので、これはどの現場でも同様ですが、コンクリートの品質に関してはこだわっています。また今回は形状が複雑ですので、測量の間違いなどが生じないように、墨をミリ単位で管理して、一つひとつ丁寧に仕事を進めています」。


実は今回の現場では、掘削・山留工事と桟橋の構築までが従前の別工事として、これも当社の手によって実施していました。しかし、これらは別工事扱いであったため、その際に設置した桟橋や杭は指定仮設という扱いで場所を変えられない縛りがありました。
「当然、躯体の構築時にこれらの仮設物と干渉する場所が出てくるのですが、それが最低限で済むように、効率的に工程を考えるというのが、この工事の最大のポイントです」。
2022年4月にスタートしたこの工事は、丸3年目を迎えた現在、躯体の約9割が完成しました。ここから桟橋を部分的に解体しながら、仮設と干渉する残り1割の部分を、約1年間で仕上げていくそうです。


近年、建設業界では鉄筋工や型枠工の不足が慢性化していますが、この現場では多くの協力会社にご協力いただくことで、作業員を確保しているとのこと。
「とにかく現場が広いので、目の行き届かないところが出ないように注意しています。そういう中でたくさんの協力会社に入ってもらっているので、品質や安全管理のため、とにかく毎日歩き回って色々な人に何度も声掛けをしています。また工期が厳しい中でも、作業員の皆さんの労働時間を厳守する必要がありますので、工事に手戻りが生じないように、日々確実に仕事を進めています」。


私たちが作っています

やり遂げた後に味わう、本物の達成感
私たち現場の人間にとって達成感とは、やはり自分に任された仕事をしっかりとやり遂げた時に感じるものだと思います。私自身、大変だったけど、やり遂げて良かったと最初に感じたのは、初めて配属された現場で竣工を迎えた時でした。施主の担当者から「良い仕事をしてくれて本当にありがとう!」と言われた時、鳥肌が立ち、「次の現場も頑張ろう」と思ったことを今も覚えてます。そういう幸せな体験を積み重ねてくることができたので、今もこの仕事を続けています。
私が感じたような「ひとつの現場をやり遂げた」という達成感を味わうことができると、この仕事の醍醐味を知り、大きな成長にも繋がるのではないかと感じています。

作業員の皆さんとコミュニケーションを取り、より良い品質で安全に工事が進められるように意識しています。
現場の工程表を作成し、計画通りに作業を進めています。発注者に満足いただけるようなものづくりを全うしたいと考えています。
工事概要
工事名称 | 川崎市上下水道局 等々力水処理センター建設土木その40工事 |
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発注者 | 川崎市上下水道局 |
施工者 | 戸田・TSUCHIYA・織戸・小俣JV |
工期 | 2022年4月〜2026年3月(予定) |
概要 |
本体作業土工 埋め戻し:14,145m3 本体築造工 電気棟:27,918m3 ろ過池:33,028m3 既設好気ろ床:178.5m3 本体仮設工 7段梁・桟橋撤去・盛替梁6段 構造物撤去工 一式 建築工事 一式 |